これはシステム用語なのか⁈

今は当たり前になりましたが、自動車のドアをロック、解除したりするのは手動ではなく、赤外線やFM電波を使用してリモコン操作で行っています。

そして、ほとんどのメーカはドアロックを作動させる部品に「電磁モーター」を使用して作動させています。

そんな中で平成12年(西暦2,000年代)くらいまで、バキュームポンプを使用していたメーカーがあります。

それは「メルセデスベンツ」です。

バキュームポンプは電磁モーターに比べると、作動音が限りなく小さく、高級感があります。

電磁モーターは作動させると「ガッシャン!」「ガッシャン!」と大きな機械音がしますからね。

但し、デメリットがあって、ドアロック用に取り付けられている「エレメント」と言われる部品の内部は「ゴム製」のため、劣化すると漏れてくるのです。

そのため、バキュームポンプのユニットが「システムの圧力が上昇しない」と判断して過剰に何度もポンプを作動させてしまい、最悪の場合、内部でポンプが焼き付いて動かなくなってしまいます。

結果、かなりの高額費用になります。

実は、このような故障事例が結構、多いのです。

そのため、漏れている箇所を特定する事が、とても大切です。

バキュームポンプが壊れているからと、そのまま交換しても、また壊れてしまいますから。

そのバキュームポンプが配置されているのは、トランクルーム内が多いです。

こちら↓↓↓

ちなみに、この車両はメルセデスベンツSクラス(W220)です。

拡大してみると…

プラスチックのホースが何本も取り付けられています。

では、バキュームポンプを外してみましょう!

バキュームホースが取り付けられていた箇所を、よく見てみると…

アルファベット表記が刻印されています。

それは全て意味があり、バキュームホースが、どこの部品に接続されているかを示しています。

例えば、こちら↓↓↓

「SK」と表記があります。

これは「ベントライン」。

バキュームポンプによって発生した空気圧を逃がすラインです。

そして次!

「KAF」と表記されています。

これは「リヤシートヘッドレスト」です。

この車両はリヤシートのヘッドレストをバキュームで操作さているのです。

そして次!

「HECK」と表記されています。

これは「トランクドア」です。

そして次!

「TD」と表記されています。

これは「ガソリン給油口のフラップ」です。

ちなみに…

「FoR]は「右リヤドア」

「FoL]は「左リヤドア」

「BFT」は「右フロントドア」

「FT」は「左フロントドア」です。

ちなみに、この表記。

ドイツ語の略称かと思っていましたが…

「右」は「Rechts」。「左」は「Links」。

「前」は「vorhergehend」。「後ろ」は「hinter」。

なので、ドイツ語や英語でもないようです。

そして最後に…

「MKL」と表記されています。

これは「フロントシート」です。

フロントシートに内蔵されている「エアークッション」を作動させています。

弊社の経験では、ここのシステムが漏れているケースが結構、多いですね。

漏れている箇所が音を出してくれていたら、とても分かりやすいですが、全般的に音が 確認出来ないケースが 大半です。

また、バキュームホースはプラスティック製のホースなので、途中で曲がって、折れて、ホースが切れているケースもあります。

以上、各表記の説明をしましたが、車両の状況によっては「誤接続」されていたケースもあります。

「きっと、ここだろう!」と思い込むと、 思わぬ落とし穴がハマってしまうかもしれません。

故障診断は、急がず、丁寧に行いましょう!

思い込みに注意

1990年代「メルセデスベンツ」と言えば、「スリーポンテッドスターマーク」と同時に「四角いヘッドライト」のフロントマスクが特徴でした。

そのメルセデスベンツが1996年、Eクラスをフルモデルチェンジした際にヘッドライトの形状を「丸目」にした事は衝撃的でした。

当時「丸目のヘッドライト」と言えば「ジャガー」というイメージでしたから。

賛否両論ありましたが、結局、約10年間、丸目のヘッドライトのデザインを続けました。

メカニックの立場で見ると、Eクラスが丸目になったあたりから、急速に車の「電子化」早くなった事を覚えています。

「CAN(コントロール・エリア・ネットワーク)」という通信システムが拡充されて、全てのコントロールユニットがデーター通信で、つながれるようになっていきました。

そして、最近の車両は、色々なものが「コントロールユニット化」しています。

「メーターパネル」「ルームランプ」「ドア」など…

それぞれが独立したコンピューターになってCAN通信で接続されて、データーのやり取りをしています。

先日、メルセデスベンツのCクラス(W204)で「リヤドアのドアロックが左右共に作動しない」という症状で入庫がありました。

テスターで診断してみると故障メモリの入力は無いものの、リヤドアのコントロールユニット内のドアロックの実測値では左右共に「メカニカルエラー」という表示が出ていました。

まずはリヤドアを確認。

こちら↓↓↓

そして、これがコントロールユニットです。

↓↓↓

とりあえずコントロールユニットへの電源電圧を点検してみましたが問題は無いため、「コントロールユニットの不具合」ではないかと判断しました。

ですが、左右同時になるものなのかとの疑問があり、まずはどちらか片側だけでも交換して変化があるかどうか、確認してみたいと思い、同じ品番の中古の部品を取り寄せて交換。

交換後、変化無し。

どうしたものかと調べら直してみました…

すると、ある事を発見しました。

「リヤドアコントロールユニット」と「リヤドアロック」は接続されていない!

上記の写真をよくよく見てみると、確かにドアロックへ行く配線が無い!

さらに調べを進めてみると、ビックリする事がわかりました!!

実は、この車両は製造開始初期から1年くらいの期間だけ、違うコントロールユニットがリヤのドアロックを制御している事が判明しました。

配線図を見ていても、なかなか理解出来ませんでした(汗)

そして、たどり着いたコントロールユニットが「フロントSAMコントロールユニット」です。

それが、こちら↓↓↓

念のため、配線を確認!

こうして、このユニットとリヤのドアロックが、つながっている事を確認しました。

この後、フロントSAMコントロールユニットのソフトウエアが古いバージョンになっていたため、最新バージョンにアップデート。

リヤのドアロックが正常に作動するようになりました。

ドアに装着されているコントロールユニットがドア回りの制御を全て行っているという思い込んでしまったために、解決までに時間がかかってしまいました(泣)

年式によって、システムが違うという基本的な知識を忘れずに、今後も取り組みたいと思います。