整備日記
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やってしまいました。
久しぶりに「やってしまった」お話。
先日、エンジンが突然、バタバタして走れなくなってしまうので点検してほしいとの依頼を受けました。
車両は「アウディA7」
入庫時、エンジン不調の症状は無かったものの、エンジンチェックランプが点灯。
同時に「EPC」ランプも点灯していました。
こんな感じです↓↓↓

早速、診断機を接続しました。
すると…

この「シリンダー3,ミスファイヤー検出」という故障メモリをみて、すぐに考えたのが…
この症状に、この故障メモリの定番中の定番。
「イグニッションコイルの不具合」で間違いないだろうと判断。
見積書を作成して、お客様に連絡。
作業を進める了解を頂いて、部品を注文。
部品が入庫したところで、作業を進めました。

エンジンはこちら。4気筒エンジンです。

部品を取り外してみると…

左側に比べて、右側の部品の先の部分がオイルで濡れています。
全部のイグニッションコイルを取り外して、よく見てみると…

ちょっと拡大してみましょう。

こちらのシリンダーは綺麗になっていますが。
となりのシリンダーには、オイルが溜まっています。↓↓↓

実は、これが不具合症状の原因ではないか!
このままでは、ミスファイヤーが発生しやすい状態なので、念の為、スパークプラグも点検。
こちら↓↓↓

右から1番、2番、3番、4番シリンダーです。
1番シリンダーが一番ひどかったものの、2番シリンダー以外はオイルがたまっていた事が判明しました。
上記の写真では、取り外す際、拭き取ってしまったので、ちょっと分かりづらいかもしれませんが…
そのためスパークプラグとプラグホールも同時に清掃してから取り付け。

イグニッションコイルも掃除をして取り付け。
走行テストをして、特に問題無し!と思っていたら…
エンジンの水温が90度くらいになった時、突然、エンジン不調発生。
今度は「EPC」ランプのみ点灯。

ちょっとピントが合っていませんが…この時はエンジンチェックランプは点灯しませんでした。
どういう事なのか?と、再度、診断機を接続。
故障メモリは同じ「 シリンダー3,ミスファイヤー検出」の状態。
そして実測値をみると…

3番シリンダーのミスファイヤーがカウントされています。
頭の中で色々と考えが巡ります。
「イグニッションコイル以外に何があるのか…」
「実はスパークプラグに不具合があるのでは…」
「もしかしたらエンジンのコントロールユニットに不具合があるのでは…」
などなど…
しかし、まだ点検する箇所があったと辿り着いたのが…
「インジェクター」です。
とりあえず、取り外してみました。

上が3番シリンダー、下が2番シリンダーのインジェクターです。
マルチテスターで内部抵抗を測定みると…
2番シリンダーが「13.3Ω」

そして、3番シリンダーが「384Ω」(=0.384KΩ)

なんと約30倍の差!
これが原因だ!と、確認のため、2番と3番のインジェクターを入れ替えて、エンジン始動!!
実測値で確認してみると…

2番シリンダーにミスファイヤーが移動していました。
これにより、「インジェクターの不具合」と確定しました。
故障原因が判明して少し安堵していたら…
今度は「日本に部品がありません」との事。
ネットなども含めて、日本中の部品商に問い合わせてみましたが、見つけることが出来ず。
探しに探して…
結局「ヤフオク」で中古部品を見つける事が出来ました。
中古部品という事で、お客様のご了解を頂き、何とか無事に修理作業を終えて、お客様に引き渡し致しました。
振り返ってみると…
●不具合症状が発生していない状態での点検
●故障メモリだけでの安易な判断
●不具合部品を特定するまでの徹底した診断
など、一つ一つを確認出来ていませんでした。
特に「安易な判断」は今後、本当に気を付けていきたいと思います。
久しぶりにやってしまったと感じた出来事でした。
一つ一つの積み重ね。
最近の車の進化の中で、一番大きい事と言えば「内燃機関(エンジン)」から「電気モーター」への変化ではないかと思います。
この「内燃機関」というのも、開発するには、なかりの費用と技術が必要となるため、実際に一から開発出来る技術を持っている国は、世界の中で「アメリカ」と「ドイツ」と「日本」しかありません。
特に日本の開発技術は群を抜いているため、追い付く事が出来ないでいます。
そのため世界は「脱炭素」を旗印に「電気モーター」へ、舵を切ったというのが現状のようです。
車の部品の中で特に「電気モーター化」が進んできているものがあります。
それは「ステアリング(操舵)機構」です。
最初は「ボール・ナット式」というタイプでトラックや本格的な4WDに装着されていました。
それが進化して「ラック&ピニオン」というタイプになり、構造がシンプルで、コストが安いという事から今では、ほとんどの車両に装着されるようになりました。
ちなみに、こんな形になります。

上記は右記から引用:https://www.setakinoko.es/wiki/ステアリング
左右の機構を比べてみると、構造の違いが分かりますね。
上記に記載はありませんが、この機構に「油圧ポンプ」を追加して「パワーステアリング」という油圧制御システムになります。
これにより、タイヤが大きく、太くて接地面積が大きいものでも、軽くハンドルを回す事が出来るようになるのです。
そして今、徐々に「電気モーター」へと代わって来ています。
先日、修理依頼を受けました車両はメルセデスベンツ「Aクラス」
2012年から2018年に販売されていた「W176」というタイプです。
メーター内に「ステアリングギヤボックス故障」と警告するインフォメーションが点灯するとの事。
診断の結果、「ステアリング・コントロールユニット不良」と判断。
交換作業をするにしても、「アッセンブリ(一体型)交換」になります。
こちらがリフトアップしてアンダーカバーを取り外した状態。

見た目に、どれがと思われると思いますが…

白い矢印の部分が、ステアリングギヤボックスのコントロールユニットです。
フロントアクスルに固定されているため、アクスルごと取り外します。
こちらが取り外した上側です。

かなり「遮熱板」が取り付けられていますが、なぜ、こんなにも多く取り付けられているかというと、外れた状態を見ると分かります。
↓↓↓

ちょうどエキゾーストパイプが通っている事により、熱による影響を防ぐため、多くの「遮熱板」が必要となります。
そして、ステアリングギヤボックスをフロントアクスルから取り外します。

上側が不具合部品。下側が新品部品です。
拡大してみると…

矢印の部分が「ラック&ピニオン」と言われるステアリングギヤボックス本体です。
そして、こちら↓↓↓

矢印の部分が「モーター」になります。
このモーターがハンドルを操作する時に軽く回せるようにサポートしてくれるのです。
そして、このモーターの上になる部品。
こちら↓↓↓

この矢印の部分が「コントロールユニット」になります。
このコントロールユニットがステアリング機能の全ての状態を把握して、制御しています。
不具合部品と新品部品とを比べた時に、何か違う(改善している)部分があるかどうか確認してみると…
ここが違っていました!
それは↓↓↓

こちらは不具合部品。
こちらが新品部品↓↓↓

トルクセンサーから入力される信号用コネクタの形状に変更があったという事は何かしら対策がされたのでしょう。
どんな改善内容かは分かりませんが、改善されたのであれば、今後、不具合が発生する可能性が一つ減る事になりますので、良かったです。
最初から完璧なものはありませんから、一つ一つの改善が故障の少ない車両を作り上げていく一歩だと思います。
メーカーさん、宜しくお願い致します。
なかなか大変な作業でした④
前回の続きです。
こちらが取り外したウォーターポンプ。

ちょうど右側に「遮熱版」が取り付けられています。
これはターボチャージャーの熱を直接的に受けないように付いています。
この遮熱版を外します。↓↓↓

そして、漏れている箇所を確認しましょう。
一番多く漏れていた箇所がこちら↓↓↓

どこから漏れているのか?
角度を変えてみると…

お判りでしょうか?
左側の黒いプラスチック製のパイプ部とアルミ製のウォーターポンプとの接合部から漏れています。
そして、もう一か所。

ここは遮熱版でカバーされていた箇所です。
やはりプラスチック製の部品では耐久性が落ちるという事なのかもしれません。
それでは新品部品と比べてみましょう。

左側が不具合部品。右側が新品です。
こうして見ても、改善されたところが分かりません。
もしかしたら、材質などの変更があるかもしれませんが…
もし変更が無いということであれば、ある程度の走行距離を走ると、同じようにまた漏れてくる可能性があります。
定期的なメンテナンスが必要になるでしょう。
車検整備だけでなく、1年定期点検も、お受けになる事をお勧め致します。
その際に、ぜひ弊社へお問い合わせ下さい。
お待ちしております。
なかなか大変な作業でした③
前回、エンジンのベルトが外れたところまで進みました。
今回は、その続きです。
困ったことに、まだ邪魔な部品があるのです。
それがこちら↓↓↓

この矢印のウォーターポンプの上を通るパイプです。
このパイプがどこへ行くかというと…

エンジンの後ろ側へ行ってます。
そして、厄介だったのが、ここです!

この矢印のステー部分を止めているトルクスのボルト。
写真では簡単に外れるようになっていますが…
実際には、こうなっています。↓↓↓

あるパイプが邪魔して外れません。
何のパイプかというと…

実は「エンジンオイルのレベルゲージ」でした。
こちらが、ちょっと角度を変えた状態の写真です。

そして、パイプを固定しているボルトを外して、オイルパンから抜きます。

こうして、スッキリとパイプが無くなり、トルクスのボルトを取り外して、邪魔なパイプを外します。

ちょっと角度を変えてみましょう。
これが外れた状態です。

こういう工程を経て、何とかウォーターポンプが外れました。

ここまでが取り外す工程となります。
この後は、ウォーターポンプの状態などを見てみたいと思います。
まだまだ続きます。
次回をお楽しみに。
なかなか大変な作業でした②
前回、ターボチャージャーが外れたところからの続きです。
さて、この車両のウォーターポンプは「ベルト駆動」されているため、エンジンのベルトを外す必要があります。
これが、「はい、そうですね」と外れません。
ターボチャージャーが外れる前のレンジンルーム。

見ての通り、左側に大きな「マウント」があります。
それがこちら↓↓↓

まずは、このクーラントリザーバータンクを外します。

横から見ると、こうなります。
↓↓↓

上側と下側に分かれてマウントがあります。
上側のマウントは全て、上から外れますので特に問題ありません。
下側のマウントはエンジンと接続しているボルトは、エンジンルームからではなく、「タイヤハウス内」になります。
それがこちら↓↓↓

フロントタイヤとタイヤハウスカバーを取り外す必要があります。
そして拡大してみると…

こうして、ようやくマウントが外れます。
外れて見えてくるのが、ベルトテンショナーです。(矢印)

拡大してみると…

左側がベルトテンショナー。右側がウォーターポンプです。
ベルトテンショナーを動かしてベルトを外すには、どうするか。

この部分にトルクスのソケットを差し込み、時計回りに動かして外します。
でも、この部分は本来、工具が入るほどのスペースはありません。
マウントが固定されている時は、こんな状態です。

この状態から上側にエンジンを上げます。

このくらいまで上げると工具が入ります。
上げる方法はエンジンハンガーで上げるか、下からジャッキで上げるかです。
そしてベルトが外れます。
これでウォーターポンプが外れると思ったら大間違いです。
まだまだ続きます。