足廻り異音の故障事例

我々、整備士として「一番難しい」と言える修理は「音」による不具合です。

何故かというと音は「響く」からです。

運転席では右の前から聞こえても、実際には右の後ろから音がしていたなんて事が、よくあります。

まして、この音の修理の場合、ほとんどが動いている時にしか、音が出ない場合が多いのです。

特に見た目は「何ともない」となると、故障個所を特定するのは難しく、時間が掛かります。

10年、20年と経験しても、なかなか難しいのです。

ここで「音」による修理で特徴的な事例を御紹介しましょう。

お客様から

ハンドルを回すと「ギーギー」と音がする。

段差を乗り越える時に「ギーギー」と音がする。

ブレーキを踏んだ時にも「ギーギー」と音がする。

という症状で入庫。

確認すると確かに「ギーギー」と大きな音がしています。

ハンドル回すと音が出るという事は「ステアリング」?

段差を乗り越えると音が出るという事は「ショックアブソーバ」?

ブレーキを踏むと音が出るという事は「ブレーキ」?

さて、どれが正解か?

リフトアップして点検しても「音」は出ません。

ですが、リフトから降りると「音」は出ます。

という事で「アライメントリフト」と言って、タイヤを浮かせず、そのままの状態で車両を上げられるリフトで上げて点検してみると「音」が確認出来ました。

正解はここでした。
自動代替テキストはありません。
右フロントのロワーアームとナックルの接続部にある「ボールジョイント」と言われる部品です。

ここの内部に潤滑剤のようなものを注入すると一時的に音が消えます。

ボールジョイントは内部にグリスという半固体状の潤滑剤が入っています。

そのグリスを保護するためのゴム製のブーツが劣化して、亀裂が入り、内部のグリスが飛び出して、潤滑不良となって音が発生してしまうようです。

なので一時的なものでは対応が効かなくなった場合は交換するしかありません。

 

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見た目からも分かるように簡単には外れません。

バラバラになったのが、こんな感じです。

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これだけ外して、ようやく見えてくる部品なのです。

ここまででも結構、大変な作業なんですけど(汗)

そして外れた部品がこれ。

 

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これがボールジョイントです。
この部品から音が出ている事を突き止めるまで、かなり時間が掛かりました。

こんな事例もありますので、ご参考までに。

外すには特殊な工具が必要となるので、どうしても請求金額が高くなってしまいます。

残念ですが個人で出来る作業ではありませんので、チャレンジはお薦め出来ません!

是非、弊社へご依頼下さい!!

お待ちしておりま~す。

ゴム&プラスチック部品の劣化

ほとんどの方は、日本車は「壊れない」。外車は「よく壊れる」というイメージを持っていないでしょうか。

その違いは何なのでしょう。

日本とヨーロッパの違いの一つとして「季節」があります。

ヨーロッパにも四季はありますが、日本ほどハッキリとしたものではないそうです。

そして特に夏季である暑く、ジメジメとした「高温多湿」というのは日本特有で、ヨーロッパには無い気候です。

そのためかヨーロッパ車は特に「ゴム製品」や「プラスチック製品」と言われる部品は非常に弱い傾向があります。

例えば、これ。

 

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上の写真は「ウインドウォッシャタンク」です。

経年劣化によって変色しています。

中をのぞいて見ると…

 

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ヒビ割れしています。

当然、ウォッシャー液が漏れてしまいます。

決して事故などで衝撃を与えたりして、こんなになった訳ではありません。

だいたい10年も使用すると結構、多いトラブルの一つですね。

そして、もう一つ。

 

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これは「ラジエータ」と言って、エンジンを冷却するために高温になった水を再度、冷却するものです。

サイドタンクと言われる両端の黒い部分がプラスチックで出来ています。

これも劣化すると…

 

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真ん中あたり、縦にヒビが入っているのが分かるでしょうか?

違う車両で、キレイにしたものが以下の写真。

 

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こちらも縦にヒビが入っています。

高温で圧力が掛かる部品なので耐久性は求められますが、残念ですが10万キロはもたない車両が、ほとんどですね。

極め付けは、これです。

 

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見た目、なんともない普通のエンジン。

「エンジンの調子が悪い」という症状で入庫しました。

点検を進めて見ると…

 

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上記の写真はエンジンハーネス(配線)です。

よくよく拡大して見てみると…

 

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ボロボロ(泣)

 

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上記の写真はイグニッションコイルへの配線です。

こちらもボロボロ…

内部の銅線が、むき出しになっているので車両火災になるのではないかと、ちょっと心配になってしまうレベルですよね。

実は、この配線の被膜部分は「ゴム」なのです。

年式の古い車両や高走行距離の車両は要注意です。

3つの例をご紹介しましたが、実をいうと、どれも「エンジンルーム」にある部品。

エンジンルームは車の中でも一番、寒暖の差が激しい場所です。

劣化が激しくなり、放置していると故障個所が重複してくる可能性があります。

もちろん、その分、修理費用が高額になってしましますね(汗)

なので早期に発見するためにも、定期的な点検をお薦め致します。

ブレーキランプ廻りの意外な故障原因

最新の自動車は「高性能」「低燃費」。

今は「アナログ」ではなく「デジタル」へ。

「電気」ではなく「電子」の世界となっています。

特徴的なのは、ライト回りで「バルブ(電球)」から「LED(発光ダイオード)」へと進化しています。

以前のようにライトの電球が切れて、交換するような事が無くなります。

これは、すごい事です。

ノーベル賞を受賞した方々の功績は、ここでも活かされているのです!

これも3人の研究者の賜物ですね!!

有難う御座います!!!

それでもLEDになる前、ライト回りの電球が切れるとメーターに、どこの電球が切れているのか、運転手にインフォメーションを点灯して教えてくれるくらいにまで進化していました。

ライトが切れている事を分からないまま、運転しているという事が少なくなっていたのです。

でも本当に切れているか、どうかは人の目で確認する必要があります。

ここは、まだまだ「アナログ」です(笑)

「右ブレーキランプ不灯」のインフォメーションが点灯したのでランプを見てみると…

ちゃんと点灯している!

「あれ!?点灯しているのに、なんで!!?」

なんて経験はありませんか?

テールランプを外して見てみると…

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外観では全く分かりませんが、電球が取り付けられているソケットを外してみると

 

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青いソケットの右側にある接点が茶色く焦げています。

 

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原因はこれか!?

と思ったら大間違いです。

何と実は、これ↓

 

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ソケットが取り付けられる一部が凹んでいるのが分かりますか?

左上の部分です。

基盤を固定しているプラスチック部が溶けて変形しているのです。

ブレーキランプは、ほかのランプに比べて使用頻度が高く、熱を持ちやすい箇所。

何度も、何度も点灯を繰り返し、または渋滞時には、ずーと点灯している訳ですからね。

ヒドイ状態になると全く点灯しなくなります。

今は「フルLED」なんて車が多くなってきています。

もしかしたら、こういう故障は、いつかは無くなるのかもしれません。

今後は、どんな進化が見られるのでしょうね。

ルーフライニングの剥がれ

愛車を長く乗っていると色々な想い出と共に、色々なトラブルもありますよね。

例えば…

・ライトが暗いと思ったら、バルブが切れていた。

・アクセルとブレーキを間違えて、ぶつけてしまった。

・突然、エンジンが掛からなくなった。

等々、大変な思いをした経験もあるかと思います。

もしかすると10年、20年と長く乗っていると、何が起きても私達よりも、オーナーさんの方が驚かないかもしれませんが(笑)

いつもは運転席しか乗らないオーナーさんも、たまには助手席に乗る事もあるかもしれませんが、なかなか後部座席に乗る機会は無いと思います。

ある時、友人を後部座席に乗せたら「何これ?」と言われてビックリ!

ふと天井を見上げると…

本当に「なんじゃ、これは!?」状態!!

 

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天井が落ちて来ているみたい?!

実はこれ室内の天井に取り付けられている「ルーフライニング」という部品のシート部分が膨らんでいる…

というより「剥がれ落ちてきている」状態なのです。

日本で自動車を所有しているオーナーさんの駐車状況の、ほとんどは「屋外」です。

「屋根付」や「ガレージ」で駐車しているケースは意外と少ないのではないでしょうか。

ボンネットやトランクなどに比べると、日陰になる事がなく、高温多湿にさらされる部分の天井(ルーフ)。

寒暖が激しい気温差や、荒れた天候が、天井を直撃しています。

そんな状況に耐え切れなくなって、接着剤が剥がれているのです。

結構、外すのは大変なのですよね(汗)

 

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外してみると…

 

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全体的にヨレヨレな状態です。

 

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裏返しになっているので分かりにくいですが、右側の不良品は端っこが剥がれていて黄色い部分が見えて、ヨレヨレになっていましたが、左の新品はピシッとしています。

部品価格は約10万円+交換工賃は約5万円=合計約15万円+税。

結構、大きな出費となってしまいますね。

最近は「張替」を行っている業者さんもいらっしゃるそうです。

高年式のオーナーさん!

駐車場が屋外のオーナーさん!!

たまには天井も、見てみましょう!!!

エンジンマウント劣化は振動の原因

自動車のエンジンには主に「ガソリンエンジン」と「ディーゼルエンジン」の2種類があります。

最近では、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた「ハイブリッドエンジン」や、エンジンが無い「電気モーター」だけというものもあり、最新では水素で走る「燃料電池」というものも開発されています。

ここ数年での進化は凄まじいですが、まだまだ主流とまではなっていません。

基本的にエンジンは内部で燃料を爆発させる事で動く力になっています。

ガソリンは圧縮させた空気と燃料に火を付ける事で。

ディーゼル(軽油)は空気と一緒に圧縮させると自分で火を付けて爆発します。

それぞれ特性があり、ガソリンよりディーゼルの方が燃費が良く、燃料価格も安いため、商業車に多く使われています。

ですが、黒煙などの排気ガスに問題があり、対策が必要となります。

最近では規制が厳しくなった事で技術も進化し、軽油自体の質も向上したので以前と比べると、かなり良くなっています。

それでも「燃料を爆発」させている訳ですから、エンジンの調子に関わらず、どうしても「振動」が発生してしまうのです。

そこで振動対策の一つとして取り付けられているのが「エンジンマウント」という部品。

 

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この写真のようにエンジンとボディーの間に取り付けられる事で振動を吸収してくれます。

でも、さすがに走行距離を重ねてくると「劣化」してきます。

劣化した時の典型的な症状は

「シフトレバーをDレンジ、またはRレンジにシフトすると室内に振動が大きく伝わってくる」

という感じです。

そんな症状が出た時に点検してみると…

 

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左側が新品で、右側が劣化した部品です。

ちょっと分かり難いのでカバーを外してみると…

 

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一目瞭然ですよね!

頭部が凹んでいるのが分かります。

この差が非常に大きいのです。

これはエンジンの左右に一つずつ取り付けられていますが、実はもう一つあるんです。

そこはトランスミッションの後ろ側。

 

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これも見た目では分かりませんが、新品と比べてみると…

 

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トランスミッションの後ろ側だからと言って侮るなかれ!

結構、振動が大きくなります!!

でも、急に劣化する訳ではありません。

徐々に、徐々に時間を掛けて劣化します。

なので意外とオーナー様は気が付き難いのです。

快適に愛車を乗って頂くには、とても大切な部品です。

一年に一度は点検して大切なお車を快適に長く乗って頂きたいと思います